1DCAEとは

1Dモデリングの理解

1Dモデルとは「1DCAEの概念を具現化したモデル」です.

対象の装置(物理システム)の1Dモデルを作成するためには,その現象を定式化してモデルとして表現し,業務で使用するシステムにまで展開していく必要がありますが,1Dモデリング研究会では,このモデルのレベルを5段階にわけて定義しています.

実際の業務ではレベルⅤのモデルをオペレートすることがほとんどなのですが,技術的な成果を出していくためには(ただのオペレーターにならないためには)すべてのレベルのモデル構造を理解している必要があります.

また1DCAEの重要な概念として「見通しのよさ」があります.各レベルでモデルが見通すものは変わってきますので,レベルが高いモデルほどいいモデルとは限りません.例えば既存機種のモデル(レベルⅤ)の中に,検討段階の機能をサブモデル(レベルⅠ~Ⅳ)として組み込んで検証することなどはよくあります.

1Dモデルを理解するためのコツとしては,機械工学と情報工学(IT)の両方の基本の概念を押さえることです.下記のモデル・レベルの中で言及すると,レベルⅠとⅡは機械工学の範疇であり,レベルⅣとⅤは情報工学の範疇になります.レベルⅢは機械工学と情報工学の両方が含まれています.


1DCAEを具現化するためのモデル・レベルⅠ~Ⅴ

  • レベルⅠ:支配方程式モデル

Modelica構造の基本をあらわすスクリプトモデルです.

階層化されていないフラットモデルですので「非因果的モデリング」の基本構造がよく理解できます.

レベルⅠのモデルはこちらの記事を参照してください


  • レベルⅡ:物理現象モデル

階層化(クラス化)されたスクリプトモデルです.

物理システムの定式化を行います. 対象機器の挙動を適切に数理モデルに落とし込めているかどうかがキーポイントになります.

1DCAEの概念を具現化するためには最も重要な作業です.


  • レベルⅢ:機械要素モデル

各機械要素(クラス)を,スルー変数とアクセス変数を用いた「コネクタ」と呼ばれるインターフェースで接続したスクリプトモデルです.

これが所謂「モデルベース開発上で使われる1Dモデル」と呼ばれるものの基本になります.

インターフェース(コネクタ)を用いて各クラスをつなげることで,汎用性が向上しモデルの再利用性が上がります.

またスルー変数やアクセス変数を理解するためには,各複合領域(機械,電気,熱流体,電磁気 等)におけるシステム・アナロジーの理解が必要です.


  • レベルⅣ:生産性モデル

スクリプトベースである レベルⅢの機械要素モデルを,GUI適用のためにグラフィカルに表現する機能を付与したモデルです.

計算実行時(コンパイルファイル)の中身はレベルⅢと同じですが,グラフィックで視覚化して全体像を見ることが出来ますので,社内展開する際に有益なモデルです.


  • レベルⅤ:実務モデル

標準または追加(商用・無償あり)のライブラリを用いたモデルです.

(※ ここまで来ると FMI(Functional Mockup Interface )連携や MILS → SILS → HILS 展開など,機械工学の範疇を超えた多様な適用範囲の拡大が期待できます.ただしこの発展分野は多くの一般産業にとってまだまだ発展途上にあると言えるため,成果を得るためにはプロジェクトの目標設定が最大のキーファクターになると言えます)